障害者総合支援法等に基づくサービスの概要について解説します

2023/10/24

障害福祉

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障害者総合支援法によるサービスは、種類が多く、似たような名称のサービスも多いため、全体像をつかむことがなかなか難しいと思います。

そこで、まずは、この記事で全体的なイメージをつかんでいただき、そこから具体的なサービスの理解につなげていただければと思います。

執筆したのは、障害福祉専門の行政書士です。

障害者総合支援法の概要

障害者総合支援法は、障害者に対する福祉サービスなどについて定めた法律で、正式には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」といいます。

障害者総合支援法は、特定の障害について定めるのではなく、身体・知的・精神のいわゆる三障害のほか、発達障害難病についても対象としています。

また、障害者総合支援法は、市町村や都道府県に対して、障害者が地域で生活しやすい社会にするために必要な計画を作成すべきことも定めています。

「自立支援給付」と「地域生活支援事業」

障害者総合支援法による障害者への福祉サービスは、「自立支援給付」「地域生活支援事業」で構成されています。

自立支援給付とは

自立支援給付とは、障害者総合支援法に基づき、利用者に対して個別に行われるサービスのことです。

自立支援給付の中で中心的な役割を果たしているのが、介護給付訓練等給付です。

介護給付は、いわゆる介護を行うためのサービスであり、居宅介護(ホームヘルプ)や生活介護などが該当します。

訓練等給付は、障害者の特性に応じた訓練を行うものであり、自立訓練、就労移行支援、共同生活援助(グループホーム)などが該当します。

地域生活支援事業とは

上で述べた自立支援給付は、基本的には全国どこでも受けることができるサービスです。

しかし、例えば都心部と地方では、地域的な事情、社会的な資源、かけられる予算などがまったく異なります。そのため、全国一律のサービスだけでは対応できない部分について、その地域に合った支援を実施する必要があります。

それを行うのが、地域生活支援事業です。

自立支援給付では、「個々の障害者に必要なサービスの内容」に視点が置かれるのに対し、地域生活支援事業では、「その地域で提供できるサービスの内容」に視点が置かれることになります。

地域生活支援事業には、市町村が行うものと、都道府県が行うものがあります。

都道府県が行う地域生活支援事業は、人材養成に関する事業や、専門性の高い事業、広域的に行う必要がある事業など、市町村をサポートする事業が中心です。

これに対し、市町村が行う地域生活支援事業では、相談支援や、成年後見制度利用支援、移動支援、地域活動支援センターなど、生活に直結する事業が実施されます。

このように、地域生活支援事業では、現場で動く市町村と、後方支援をする都道府県というように、役割分担をして、その地域に合った支援を行えるようにしています。

障害者総合支援法に基づくサービス

自立支援給付の具体的な内容

 介護給付 

①居宅介護(ホームヘルプ)
◆対象
障害者、障害児
◆サービスの内容
自宅で、入浴、排せつ、食事の介護等を行います。

②重度訪問介護
◆対象
障害者
◆サービスの内容
重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により、行動上著しい困難を有する人で常に介護を必要とする人に、自宅で、入浴、排せつ、食事の介護、外出時における移動支援、入院時の支援などを総合的に行います。

③同行援護
◆対象
障害者、障害児
◆サービスの内容
視覚障害により、移動に著しい困難を有する人に、移動に必要な情報の提供(代筆・代読を含む)、移動の援護等の外出支援を行います。

④行動援護
◆対象
障害者、障害児
◆サービスの内容
知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有し、常時介護を要する人が行動するときに、危険回避に必要な支援や各種の外出支援を行います。

⑤重度障害者等包括支援
◆対象
障害者、障害児
◆サービスの内容
介護の必要性がとても高い人に、居宅介護等複数のサービスを包括的に行います。

⑥短期入所(ショートステイ)
◆対象
障害者、障害児
◆サービスの内容
自宅で介護する人が病気の場合などに、短期間、施設で、入浴、排せつ、食事の介護等を行います。

⑦療養介護
◆対象
障害者
◆サービスの内容
医療と常時介護が必要な人に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護、日常生活支援を行います。

⑧生活介護
◆対象
障害者
◆サービスの内容
常に介護を必要とする人に、昼間、入浴、排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作的活動又は生産活動の機会を提供します。

⑨施設入所支援
◆対象
障害者
◆サービスの内容
施設に入所する人に、夜間や休日に、入浴、排せつ、食事の介護等を行います。

 訓練等給付 

①自立訓練
◆対象
障害者
◆サービスの内容
自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練を行います。機能訓練と生活訓練があります。

②就労移行支援
◆対象
障害者
◆サービスの内容
一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。

③就労継続支援(A型・B型)
◆対象
障害者
◆サービスの内容
一般企業等での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。
事業所と雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型があります。

④就労定着支援
◆対象
障害者
◆サービスの内容
一般就労に移行した人の就労の継続を図るため、就労に伴う日常生活又は社会生活を営む上での問題に対応するための支援を行います。

⑤自立生活援助
◆対象
障害者
◆サービスの内容
一人暮らしに必要な理解力・生活力等を補うため、定期的な居宅訪問や随時の対応により日常生活における課題を把握し、必要な支援を行います。

⑥共同生活援助(グループホーム)
◆対象
障害者
◆サービスの内容
共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。

 相談支援 

①計画相談支援
◆対象
障害者、障害児
◆サービスの内容
< サービス利用支援 
障害福祉サービス等の申請に係る支給決定前に、サービス等利用計画案を作成し、支給決定後に、サービス事業者等との連絡調整等を行うとともに、サービス等利用計画の作成を行います。
< 継続サービス利用支援 
支給決定されたサービス等の利用状況の検証(モニタリング)を行い、サービス事業者等との連絡調整などを行います。

②地域相談支援
◆対象
障害者
◆サービスの内容
< 地域移行支援 
障害者支援施設、精神科病院、保護施設、矯正施設等を退所する障害者、児童福祉施設を利用する18歳以上の者等を対象として、地域移行支援計画の作成、相談による不安解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整等を行います。
< 地域定着支援 
居宅において単身で生活している障害者等を対象に常時の連絡体制を確保し、緊急時には必要な支援を行います。

 自立支援医療 

①精神通院医療
◆対象
統合失調症などの精神疾患があり、通院による精神医療を継続的に要する人(年齢による制限なし)
◆制度の内容
精神通院医療の指定を受けている医療機関で、精神障害者の医療の確保を容易にするための医療費の支給が受けられます(所得に応じて患者の負担上限額が設定されます)。

②更生医療
◆対象
身体障害者手帳の交付を受けており、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる人(18歳以上)
◆制度の内容
更生医療の指定を受けている医療機関で、身体上の障害を軽減し、日常生活を容易にするための医療費の支給が受けられます(所得に応じて患者の負担上限額が設定されます)。

③育成医療
◆対象
身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる人(18歳未満)
◆制度の内容
育成医療の指定を受けている医療機関で、身体上の障害を軽減し、日常生活を容易にするための医療費の支給が受けられます(所得に応じて患者の負担上限額が設定されます)。

 補装具 

①補装具費の支給
◆対象
補装具を必要とする障害者、障害児、難病患者等
◆制度の内容
身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完・代替する用具について、購入等に要した費用の額から、対象者の家計の負担能力等をしん酌して政令で定める額を控除して得た額を支給します。

地域生活支援事業の具体的な内容

 市町村事業 

①理解促進研修・啓発
障害者に対する理解を深めるための研修や啓発事業を行います。

②自発的活動支援
障害者やその家族、地域住民等が自発的に行う活動を支援します。

③相談支援
< 相談支援 
障害のある人、その保護者、介護者などからの相談に応じ、必要な情報提供等の支援を行うとともに、虐待防止や権利擁護のために必要な援助を行います。
< 基幹相談支援センター等の機能強化 
地域における相談支援の中核的役割を担う機関として、総合的な相談業務の実施や地域の相談体制の強化の取り組み等を行います。

④成年後見制度利用支援
補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難である人を対象に、費用を助成します。

⑤成年後見制度法人後見支援
市民後見人を活用した法人後見を支援するための研修等を行います。

⑥意思疎通支援
聴覚、言語機能、音声機能、視覚等の障害により意思疎通に支障がある人とその他の人との意思疎通を仲介するため、手話通訳、要約筆記、点訳等を行う人の派遣などを行います。

⑦日常生活用具給付等
障害のある人等に対し、日常生活がより円滑に行われるための用具の給付又は貸与を行います。

⑧手話奉仕員養成研修
手話で意思疎通支援を行う者を養成します。

⑨移動支援
屋外での移動が困難な障害のある人について、外出のための支援を行います。

⑩地域活動支援センター
障害者が通う施設として、創作的活動、生産活動の機会を提供し、社会との交流、自立及び社会参加を支援するために必要な援助を行います。

⑪その他(任意事業)
市町村の判断により、尊厳を保ちながら日常生活又は社会生活を営むために必要な事業を行います。日中一時支援などがこれに該当します。

 都道府県事業 

①専門性の高い相談支援
発達障害、高次脳機能障害など専門性の高い相談について、必要な情報提供等を行います。

②広域的な支援
都道府県相談支援体制整備事業など、市町村域を超える広域的な支援が必要な事業を行います。

③専門性の高い意思疎通支援者の養成・派遣
意思疎通支援を行う者のうち、特に専門性の高い者(手話通訳者、要約筆記者、盲・ろう者向け通訳・介助員、失語症者向け意志疎通支援者等を想定)を養成、又は派遣する事業を行います。

④意思疎通支援を行う者の派遣に係る連絡調整
手話通訳者、要約筆記者の派遣に係る市町村相互間の連絡調整を行います。

⑤その他
都道府県の判断により、人としての尊厳を保ちながら日常生活又は社会生活を営むために必要な事業を行います。オストメイト社会適応訓練、発達障害者支援体制整備などがこれに該当します。

障害児を対象としたサービス

障害児を対象としたサービスは、基本的に児童福祉法に基づきますが、便宜上、この記事に記載しています。

障害児を対象とするサービスには、都道府県による「障害児入所支援」と、市町村による「障害児通所支援」があります。また、障害者総合支援法に基づくサービスの一部を利用することもできます。

児童福祉法に基づくサービス

  障害児入所支援(都道府県事業) 

①福祉型障害児入所施設
施設に入所している障害児に対して、保護、日常生活の指導、知識・技能の付与を行います。

②医療型障害児入所施設
施設に入所又は指定医療機関に入院している障害児に対して、保護、日常生活の指導、知識技能の付与、加えて治療を行います。

 障害児通所支援(市町村事業) 

①(医療型)児童発達支援
< (医療型)児童発達支援センター >
通所支援のほか、地域の障害児支援の拠点として、「地域で生活する障害児や家族への支援」、「地域の障害児を預かる施設に対する支援」などの地域支援を実施します。
医療の提供の有無によって、「児童発達支援センター」と「医療型児童発達支援センター」に分かれます(令和6年度から「児童発達支援センター」に一元化)。
< 児童発達支援事業 >
未就学の障害児に対し、基本的な動作の指導、知識・技能の付与、集団生活への適応訓練などの支援を行います。

②放課後等デイサービス
就学中の障害児に対し、放課後や夏休み等の長期休暇中において、生活能力向上のための訓練等を継続的に提供します。
学校教育と相まって障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを推進します。

③居宅訪問型児童発達支援
重度の障害等により外出が著しく困難な障害児の居宅を訪問し、発達支援を行います。

④保育所等訪問支援
保育所等(保育所、幼稚園、小学校、放課後児童クラブなど)を訪問し、障害児に対して、障害のない子どもとの集団生活への適応のための専門的な支援を行います。

 相談支援 

①障害児相談支援
< 障害児支援利用援助 >
障害児通所支援の申請に係る支給決定前に、障害児支援利用計画案を作成し、支給決定後に、サービス事業者等との連絡調整等を行うとともに、障害児支援利用計画の作成を行います。

< 継続障害児支援利用援助 >
支給決定されたサービス等の利用状況の検証(モニタリング)を行い、サービス事業者等との連絡調整などを行います。

< 留意事項 >
障害児の居宅サービス
については、指定特定相談支援事業者がサービス利用支援・継続サービス利用支援を行います(障害者総合支援法の計画相談支援)。
障害児の入所サービスについては、児童相談所が専門的な判断を行うため、障害児相談支援の対象とはなりません。 

まとめ

  • 障害者総合支援法に基づくサービスには、自立支援給付地域生活支援事業があります。

  • 自立支援給付は、利用者に対して個別に行われるサービスであり、介護給付(居宅介護など)と訓練等給付(自立訓練など)が中心です。

  • 地域生活支援事業は、全国的なサービス(自立支援給付)では対応しきれない地域的な課題をカバーします。

  • 障害児は、児童福祉法に基づくサービス(児童発達支援など)に加えて、障害者総合支援法に基づくサービスの一部(居宅介護など)を利用できます。

障害者総合支援法に基づくサービスの概要について解説しました。
個別のサービスの詳細については、別の記事で解説していく予定です。 

参考文献等

  • 大阪府『福祉のてびき』大阪府ホームページ

  • 厚生労働省『自立支援医療制度の概要』厚生労働省ホームページ

  • 厚生労働省『補装具費支給制度の概要』厚生労働省ホームページ

  • 神戸市『障害福祉サービスの体系』神戸市ホームページ

  • 全国社会福祉協議会『障害福祉サービスの利用について』20214月版

  • 二本柳覚(編著)『これならわかる<スッキリ図解>障害者総合支援法』第3

  • 若林美佳(監修)『事業者必携障害福祉事業者のための障害福祉サービスと申請手続きマニュアル』

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障害福祉専門の行政書士です。
日々学んだことを、このブログでアウトプットしていきます。

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