障害福祉サービスは、どのような人が利用できるのでしょうか。
すぐに思いつくのは身体障害者の方や知的障害者の方だと思いますが、他にもサービスを利用できる方はたくさんいます。
この記事では、そうした障害福祉サービスの対象者について解説します。
執筆したのは、障害福祉専門の行政書士です。
障害福祉サービスの対象者とは
障害福祉サービスの給付を受けるためには、まず「障害者(児)」と認定されることが必要です。サービスの給付を希望する人は、居住する市町村に申請して、障害の程度や支給の要否について審査を受けることになります。
以前から障害者に関する制度は色々とありましたが、その制度が定める「障害者」の定義に該当しなければ、制度を利用することはできませんでした。そのため、日常生活に大きな支障が生じる病気があっても「障害者」とは認められず、支援を受けられない人たちがたくさんいました。
そうした状況のなか、平成25年に障害者総合支援法が施行され、「障害」の範囲が拡大されました。それにより、現在では、身体・知的・精神のいわゆる三障害のほか、難病等や発達障害も「障害」に含まれることになりました。
障害者(児)の定義
「障害」の範囲が広がったことで、障害福祉サービスの給付を受けられるハードルは下がりつつあります。しかし、制度を運用するには社会資源の活用や予算が必要となることから、対象者についてはどこかで線を引く必要があります。
現在、サービスの対象となる障害者の定義は、次のとおりとされています。
身体障害者
身体障害者とは、18歳以上で、身体障害者福祉法に定められた視覚障害、聴覚障害、肢体不自由などの障害があり、都道府県知事等から身体障害者手帳を交付された者をいいます。
知的障害者
知的障害者については、知的障害者福祉法に具体的な定義はありませんが、厚生労働省による「知的障害児(者)基礎調査」では、「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」と定義されています。
また、知的障害の判断基準として、次のどちらにも該当することが必要とされています。
- 標準化された知能検査によって測定された知能指数が、おおむね70までであること
- 日常生活能力(自立機能、運動機能、意思交換、探索操作、移動、職業等)が一定の水準に該当すること
精神障害者
精神障害者については、精神保健福祉法において、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定義されています。
発達障害者支援法における発達障害者はここに含まれます。
難病患者等
難病患者等については、障害者総合支援法において、「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣の定める程度である者」と定義されています。
障害者総合支援法の対象となる難病等の要件は、指定難病(医療費助成の対象となる難病)の基準を踏まえつつも、一部緩和されており、次の表のとおりとされています。
障害児
障害児については、児童福祉法において、身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害者支援法における発達障害児を含む)、治療方法が確立していない疾病や特殊な疾病による障害が一定の程度にある児童とされています。
児童とは満18歳未満の者をいいます。満18歳になった場合は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者等のいずれかに該当することになります。
まとめ
- 障害福祉サービスを利用するためには、「障害者」の定義に該当することが必要です。
- 「障害」の範囲は年々拡大しており、三障害(身体、知的、精神)だけでなく、発達障害者や難病患者等もサービスを受けることができるようになっています。
参考文献等
- 茨城県『障害者総合支援法と難病』茨城県ホームページ
- 全国社会福祉協議会『障害福祉サービスの利用について』2021年4月版
- 二本柳覚(編著)『これならわかる<スッキリ図解>障害者総合支援法』第3版
- 若林美佳(監修)『事業者必携障害福祉事業者のための障害福祉サービスと申請手続きマニュアル』