障害福祉サービス等事業所の指定基準では、独自の用語が使われていることもあり、ただでさえ分かりにくい内容がさらに難解になっています。
この記事では、指定基準でよく使用されている用語について、その意味をなるべく分かりやすく解説していきたいと思います。
執筆したのは、障害福祉専門の行政書士です。
用語の定義
常勤換算方法
- 常勤換算方法とは、事業所の従業者の勤務延べ時間数を、常勤の勤務すべき時間数で割ることにより、事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法です。
- 「勤務延べ時間数」は、当該サービスに従事する勤務時間の延べ時間数です(詳細は後述)。
- 「常勤の勤務すべき時間数」とは、就業規則等により定められた、通常の労働者が勤務すべき時間数(週32時間が下限)です。
- 例えば、常勤の勤務すべき時間数が週40時間の場合、実際に勤務した時間が週30時間であれば、30時間÷40時間=0.75(小数点第2位以下切り捨て)⇒常勤換算0.7となります。
- 当該職員が兼務している場合は、兼務しているそれぞれの職種に従事した時間数のみ算入します。
- 例えば、常勤の勤務すべき時間数が週40時間であり、当該職員が管理者兼生活支援員で、管理者として勤務した時間が15時間、生活支援員として勤務した時間が25時間の場合、次のようになります。
管理者:15時間÷40時間=0.375⇒常勤換算0.3人
生活支援員:25時間÷40時間=0.625⇒常勤換算0.6人
勤務延べ時間数
- 勤務延べ時間数とは、当該サービスの提供に従事する時間又は当該サービス提供のための準備等を行う時間(待機時間を含む)として就業規則等で明確に位置づけられている時間の合計数です。
- 従業者1人につき勤務延べ時間数に算入することができる時間数は、常勤の勤務すべき時間数が上限となります。
- 時間外勤務の時間数は、勤務延べ時間数に算入できません。
専従
- 専従とは、原則として、サービス提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事しないことをいいます。従業者の常勤、非常勤の別は問いません。
- 例えば、常勤の勤務すべき時間数が週40時間の場合、雇用時間が週20時間の生活支援員は「非常勤専従」となり、雇用時間が週40時間の管理者兼生活支援員は、「常勤兼務」となります。
常勤
- 常勤とは、当該事業所における勤務時間が、就業規則等で定められている常勤の勤務すべき時間数(週32時間が下限)に達していることをいいます。
- 育児・介護休業法等の所定労働時間の短縮措置対象者については、利用者の処遇に支障がない体制が整っている事業所においては、例外的に常勤の勤務すべき時間数を週30時間として取り扱うことが可能です。
- 人員基準において常勤要件が設けられ、当該要件に基づき常勤として配置されている従事者が、育児・介護休業を取得している期間については、当該人員基準において求められる資質を有する複数の非常勤の従事者を配置することで、人員基準を満たすことが可能とされています。
- 当該事業所に併設される事業所の職務であって、当該事業所の職務と同時並行的に行われることが差し支えないと考えられるものについては、それぞれに係る勤務時間の合計が常勤の勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たすことになります。
- 例えば、生活介護事業所と就労継続支援B型事業所が併設されている場合、それぞれの管理者を兼務している者は、その勤務時間の合計が常勤の勤務すべき時間数に達していれば、常勤要件を満たします。
利用者の数
人員基準の員数及び報酬算定要件を算定する際に用いる「利用者の数」は、前年度の平均値を用います。前年度の平均値の算出方法は次のとおりです(小数点第2位以下切上げ)。
- 新設の時点から6か月未満の間
利用定員×90% - 新設の時点から6か月以上1年未満の間
直近6か月間の全利用者延べ数÷6か月間の開所日数 - 新設の時点から1年以上経過
直近1年間の全利用者延べ数÷1年間の開所日数 - 定員減少後の実績が3か月以上6か月未満の場合
直近3か月間の利用者延べ数÷3か月間の開所日数
前年度の利用者延べ数÷開所日数(小数点第2位以下切上げ)
- 新設の時点から6か月未満の間
就労を継続している期間が6か月に達した者の数の過去3年間の総数×70% - 新設時点から6か月以上1年未満の間
直近の6か月間の全利用者延べ数÷6 - 新設の時点から1年以上経過
直近1年間の全利用者延べ数÷12
- 新設の時点から6か月未満の間
利用者の推定数×90% - 新設時点から6か月以上1年未満の間
直近の6か月間の全利用者延べ数÷6 - 新設の時点から1年以上経過
直近1年間の全利用者延べ数÷12
障がい児の数
「障がい児の数」は、児童発達支援、放課後等デイサービスの単位ごとの障がい児の数であり、実利用者の数をいいます。
多機能型
多機能型とは、生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、医療型児童発達支援、居宅訪問型児童発達支援、放課後等デイサービス及び保育所等訪問支援のうち2以上の事業を一体的に行うことをいいます。
利用定員
事業所において同時にサービス提供を受けることができる利用者の数の上限をいいます。
常勤換算の計算方法の例
居宅介護の従業者の場合
居宅介護の従業者は、常勤換算方法で、2.5以上配置する必要があります。
常勤の勤務時間が週40時間の場合、週40時間×2.5=週100時間以上の勤務延べ時間数が必要になります。
サービス提供責任者は常勤であるため、週100時間のうち、週40時間は確保されています(サービス提供責任者は従業者から選任されます)。そのため、100時間-40時間=60時間となり、残りの週60時間分について、常勤職員か非常勤職員を配置することになります。
例えば、常勤職員(週40時間)×1人+非常勤職員(週20時間)×1人=週60時間で、要件を満たすことになります。
就労継続支援A型・B型の職業指導員及び生活支援員の場合
就労継続支援A型・B型の職業指導員及び生活支援員の総数は、常勤換算方法で、利用者数を10で割った数以上配置する必要があります。
仮に、利用者数が20人で、常勤の勤務時間が週40時間とした場合、
①20人÷10=2人
②2人×週40時間=週80時間以上の勤務延べ時間数が必要になります。
職業指導員と生活支援員のいずれか1人は常勤であるため、週80時間のうち週40時間は確保されています。そのため、80時間-40時間=40時間となり、残りの週40時間分について常勤職員か非常勤職員を配置します。
例えば、非常勤職員(週20時間)×2人=週40時間で、要件を満たすことになります。
共同生活援助の世話人の場合
共同生活援助の世話人は、常勤換算方法で、利用者数を6で割った数以上配置する必要があります。
仮に、利用者が5人で、常勤の勤務時間が週40時間とした場合、
①5人÷6=0.83…≒0.9人
②40時間×0.9=週36時間以上の勤務延べ時間数が必要になります。
例えば、非常勤職員(週12時間)×3人=週36時間で、要件を満たすことになります。
常勤、非常勤、専従、兼務について
次の表には、用語の定義と4つの勤務形態(①~④)について記載しています。
なお、当該事業所の常勤の勤務時間を、1日8時間(週40時間)と設定しています。
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専従
当該事業所での勤務時間帯に、その職種以外の職務に従事しないこと
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兼務
当該事業所での勤務時間帯に、複数の職種の職務に同時並行的に従事すること
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常勤
当該事業所での勤務時間が、就業規則等で定められている常勤の勤務すべき時間数に達していること
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①常勤・専従
1日8時間(週40時間)勤務している者が、その時間帯において、その職種以外の業務に従事しない場合
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②常勤・兼務
1日8時間(週40時間)勤務している者が、その時間帯において、その職種に従事するほか、その職種以外の業務にも従事する場合
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非常勤
当該事業所での勤務時間が、就業規則等で定められている常勤の勤務すべき時間数に達していないこと
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③非常勤・専従
勤務時間が1日8時間(週40時間)に達していない者が、当該事業所においてその職種以外の業務に従事しない場合
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④非常勤・兼務
勤務時間が1日8時間(週40時間)に達していない者が、当該事業所においてその職種に従事するほか、その職種以外の業務にも従事する場合
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「常勤の勤務すべき時間数」は、当該法人又は事業所で定めた「就業規則」が根拠となります。従業者が10人未満のため就業規則の作成義務がない場合でも、常勤換算を算定するための根拠として必要であるため、常勤者の勤務日、勤務時間に関する就業規則に準じた定めを作成する必要があります。
参考文献等
- 札幌市『障害福祉サービス事業者等指定申請の手引き VOL.4』札幌市 保健福祉局 障がい保健福祉部 障がい福祉課 事業者指定担当係
- 『障害者総合支援法事業者ハンドブック 指定基準編 人員・設備・運営基準とその解釈』中央法規
- 名古屋市『障害福祉サービス事業者等指定申請・指定基準の手引き』名古屋市 健康福祉局障害福祉部 障害者支援課