【障害福祉】指定申請手続について解説
(各サービスの共通事項)

2023/11/08

障害福祉

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障害福祉サービス事業を提供する事業者は、都道府県知事(又は事務権限を移譲された市町村)の指定を受ける必要があります。

この記事では、障害福祉サービス事業の指定を受けるために必要な要件や手続きについて、各サービスに共通する事項をまとめています。

実際の指定申請においては、この記事の内容に加えて、サービスごとに定められた指定基準を満たす必要があります。サービスごとの指定基準については、別記事に記載する予定です。

なお、この記事は、主に大阪市の手引きを参考にして作成しています。
具体的な手続きは自治体によって異なりますので、必ず実際に指定を受ける自治体のホームページ等をご確認ください。

障害児支援事業(児童発達支援等)については、別の記事にまとめる予定です。

執筆したのは、障害福祉専門の行政書士です。

指定の必要なサービス

都道府県知事等の指定が必要な事業は、次の表のとおりです。

障害福祉
サービス事業
①居宅介護、重度訪問介護、③同行援護、行動援護、療養介護、⑥生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援、⑩自立訓練(機能訓練)、⑪自立訓練(生活訓練)、⑫就労移行支援、⑬就労継続支援(A型)、⑭就労継続支援(B型)、⑮就労定着支援、⑯自立生活援助、⑰共同生活援助
一般相談支援
事業
地域移行支援・地域定着支援
特定相談支援
事業
計画相談支援

指定申請の窓口

大阪府では、指定の事務権限が、から市町村又は広域福祉課に移譲されていることがあります。大阪府下の指定担当窓口は次のとおりです。

≪障害福祉サービス事業≫
事業所の所在地
指定担当窓口
大阪市、堺市、高槻市、東大阪市、豊中市、枚方市、吹田市、茨木市、八尾市、柏原市、松原市、寝屋川市
各市町村
池田市、箕面市、豊能町、能勢町
池田市・箕面市・豊能町・能勢町広域福祉課
岸和田市、泉大津市、貝塚市、和泉市、高石市、忠岡町
岸和田市・泉大津市・貝塚市・和泉市・高石市・忠岡町広域事業者指導課
富田林市、河内長野市、大阪狭山市、太子町、河南町、千早赤阪村
南河内広域事務室広域福祉課
泉佐野市、泉南市、阪南市、能取町、田尻町、岬町
泉佐野市・泉南市・阪南市・熊取町・田尻町・岬町広域福祉課
羽曳野市、摂津市、藤井寺市、守口市、門真市、四條畷市、島本町、大東市、交野市
大阪府

≪一般相談支援事業(地域移行支援・地域定着支援)≫
事業所の所在地
指定担当窓口
大阪市、堺市、高槻市、東大阪市、豊中市、枚方市、八尾市、寝屋川市、吹田市
各市町村
上記以外の市町村
大阪府

≪特定相談支援事業(計画相談支援)≫
事業所が所在する各市町村が、指定担当窓口となります。

指定の要件

基本的な要件

障害福祉サービス事業者の指定は、次の①~③を要件として、サービスの種類ごと事業所ごとに行われます。

①法人であること
法人の種類は問いません(株式会社、合同会社、一般社団法人、社会福祉法人、NPO法人など)。

②事業所又は施設の指定基準を満たすこと

③適正な運営が見込めること

指定基準

サービスの種類ごとに、以下の3つの観点から、指定基準が定められています。
指定を受けた後も、指定基準を守る必要があります。

①人員基準
従業者の知識・技能、人員配置等に関する基準

②設備基準
事業所に必要な設備等に関する基準

③運営基準
事業を行う上で求められる運営上の基準

指定申請について

指定申請のスケジュール

指定日(事業開始が可能となる日)は、多くの自治体で毎月1日とされています。

指定申請の流れ(大阪市の場合)

①事前協議(書面のみ)
  • 人員、設備等についての事前確認
  • 指定日の3月前の月末までに、事前協議書類を郵送で提出(例えば、10月1日にオープン予定の場合は7月31日までに提出)
  • 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、一般相談支援、特定相談支援は事前協議不要

 ↓

②事前協議の書類審査(指定日の前月10日まで)

 ↓

③本申請(対面で実施)

 ↓

④審査

 ↓

⑤現地確認(グループホームのみ)

 ↓

⑥指定時研修(指定日の前月25日前後)
  • 管理者の出席が必要
  • 研修終了後に指定書を交付

 ↓

⑦指定(毎月1日)

定款の目的について

法人の定款及び登記する目的については、指定申請時において、実施する事業に即した内容が記載されている必要があります。

具体的な記載内容は自治体によって異なる場合もありますので、定款の改正や登記手続きの前に、申請予定の自治体に記載すべき内容を確認してください。

例として、大阪市では次の記載が必要になります。

実施事業
記載内容
障害福祉サービス事業
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」
特定相談支援事業
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく特定相談支援事業」
一般相談支援事業
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく一般相談支援事業」
地域生活支援事業
(移動支援等)
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく地域生活支援事業」

社会福祉法人など、定款の変更に所轄庁の認可が必要な法人については、当該所轄庁の指導に従ってください。

就労継続支援A型事業を行う場合は、専ら社会福祉事業を行う法人でなければならないため、当該A型事業において行う作業内容及び社会福祉法上の社会福祉事業に限り、目的として定款に記載することができます。

他法令の遵守について

障害福祉サービス事業の指定申請を行う場合、遵守すべき様々な関係法令があります。

建築基準法に適合していることの確認

  • 事業所として使用する物件は、建築基準法上の要件を満たす必要があります。その確認のため、指定申請の際に、建築確認申請書及び検査済証の提出を求める自治体が多いようです。

  • 事業所の延床面積が200㎡を超える場合は、用途変更の手続きが必要になることがありますので、建築確認等の担当部署に事前にご確認ください。

  • 建築確認申請書や検査済証がない場合、大阪市では、法人からの「申立書」が必要になります。建築確認等の担当部署に「建築計画概要書」の閲覧申請を行い、完了検査等の記録を確認することができます。

≪用途変更について≫
用途変更とは、すでに存在する建築物の用途を変更することです。用途変更を行う場合、事前にその用途変更に係る建築確認申請が必要になることがあります。

≪建築確認について≫
一定規模以上の建築物を建築等する場合、建築主は、工事着手前に、建築主事等に『確認申請書』を提出し、その建築に係る計画が建築基準法等の基準に適合していることの確認(建築確認)を受ける必要があります。

≪検査済証について≫
新たに完成した建築物が法令の基準に適合しているかどうかの検査を完了検査といいます。建築主は、建築工事が完了すると完了検査の申請をし、この申請に基づき建築主事等が完了検査を行い、そこで問題がなければ「検査済証」が交付されます。

≪建築計画概要書について≫
建築計画概要書とは、建築確認がなされた建築物の概要(建築主、建築場所、高さ、面積等)、図面、完了検査の履歴等が記載された書面です。

消防法に適合していることの確認

  • 事業所として使用する建物が消防法に適合していることの確認も必要です。
    物件によっては消防設備(自動火災報知設備、誘導灯など)の設置が必要となる場合がありますので、事前に所轄の消防署にご相談ください。

  • 指定申請の際には、検査済の押印のある「防火対象物使用開始(変更)届出書」の写しを添付する必要があります。時期によっては、消防署の受付・検査までに時間がかかる場合がありますので、スケジュールに余裕をもって手続きをしてください。

浸水想定区域と土砂災害警戒区域の確認

事業所が対象区域内にある場合は、「避難確保計画の作成」と「避難訓練の実施」が義務付けられています。

利用者に昼食等を提供する場合

事業所において1日に20食以上の食事を提供する場合は、保健所の手続きが必要になる場合がありますので、所轄の保健所にご確認ください。

従たる事業所、多機能型事業所等

従たる事業所の取扱い

障害福祉サービス事業者の指定は、原則として、障害福祉サービスの提供を行う事業所ごとに行います。

生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型・B型については、次の表のすべての要件を満たす場合には、「主たる事業所」のほか、一体的かつ独立したサービス提供の場として「従たる事業所」を設置することが可能であり(複数設置も可)、これらをまとめて1つの事業所として指定することができます。

人員及び設備に関する要件
  • 「主たる事業所」及び「従たる事業所」の利用者の合計数に応じた従業者が確保されているとともに、「従たる事業所」において常勤かつ専従の従業者が1人以上確保されていること
  • 「従たる事業所」の利用定員が、
    生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援については6人以上
    就労継続支援A型・B型については10人以上
    であること
  • 「主たる事業所」と「従たる事業所」の場所が、おおむね30分以内で移動可能な距離であって、サービス管理責任者の業務の遂行上支障がないこと
  • 利用者の支援に支障がない場合には、基準に定める設備の全部又は一部を設けないこととしても差し支えないこと
運営に関する要件
  • 利用申込みに係る調整、職員に対する技術指導等が一体的に行われること
  • 職員の勤務体制等が一元的に管理されていること。必要に応じて、随時、主たる事業所と従たる事業所との間で相互支援が行える体制にあること
  • 苦情処理や損害賠償等について、一体的な対応ができる体制にあること
  • 同一の運営規程が定められていること
  • 主たる事業所と従たる事業所の、人事、給与等の職員管理及び会計管理が一元的に行われていること

常勤とは、正規・非正規を問わず、当該事業所における所定労働時間(就業規則等で定められている通常の労働時間)勤務することです。

専従とは、原則として、サービス提供の時間帯を通じて他の職務に従事しないことをいいます。常勤・非常勤は問いません。

出張所等の取扱い

障害福祉サービス事業者の指定は、原則として、障害福祉サービスの提供を行う事業所ごとに行いますが、例外的に、生産活動等による製品の販売、待機、道具の保管、着替え等を行う出張所等であって、上表の「運営に関する要件」を満たすものについては、「事業所」に含めて指定することができます。

利用者の支援に支障がない場合には、基準に定める設備の全部又は一部を設けないこととしても差し支えありません。

多機能型事業所の取扱い

多機能型事業所とは、生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型の事業のうち、2つ以上の事業を一体的に行う事業所のことをいいます。

児童福祉法に基づく児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援の事業も、多機能型事業所として一体的に実施することができます。

多機能型事業所でも、事業者の指定は事業の種類ごとに行うため、事業を追加する場合には、事業の変更ではなく、当該追加事業の新規指定が必要になります。

「従たる事業所」「多機能型事業所」との違いは、「従たる事業所」は複数の場所の事業所(事業内容は同じ)を一体的に管理運営するものであるのに対し、「多機能型事業所」は複数の事業を一体的に管理運営するものといえます。

≪多機能型事業所の指定要件≫
利用定員(規模)
  • 多機能型事業所全体の合計で20人以上であること
  • 各事業の利用定員が、次の人数以上であること
    生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援
    6人以上
    就労継続支援A型、就労継続支援B型
    10人以上
サービス提供職員の配置
多機能型事業所全体の利用者数が20人未満の場合、実施する事業の種類ごとに常勤従業者を配置する必要はなく、多機能型事業所の従業者のうち1人以上を常勤とすれば、その他の従業者は兼務が可能です。
サービス管理責任者の配置
  • 当該多機能型事業所全体の利用者数が60人以下の場合
    →1人以上
  • 当該多機能型事業所全体の利用者数が61人以上の場合
    →1人に、60人を超えて40人を増す毎に1人を加えた数以上
設備
サービス提供に支障が生じないよう配慮しつつ、一体的に事業を行う他の多機能型事業所の設備を兼用することが可能です。


参考文献等

  • 大阪市『障がい福祉サービス事業者等指定申請の手引き』大阪市 福祉局障がい者施策部運営指導課
  • 大阪府『建築計画概要書の閲覧及び写しの交付について』大阪府ホームページ
  • 大阪府『障がい福祉サービス事業等≪指定申請の手引き≫』大阪府 福祉部 障がい福祉室生活基盤推進課
  • 豊田市『指定申請の手続きについて』豊田市ホームページ
  • 国土交通省『建築確認制度』国土交通省中部地方整備局ホームページ

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